【 I氏からの推薦本 】
この、端正で、歪な、才能を。
『工場』
何を作っているのかわからない、巨大な工場。
敷地には謎の動物たちが棲んでいる…。
改行のほとんど無い文章を追いかけていくうちに、自分まで
この工場の大きさの中に取り込まれて、迷い込んでしまう感覚とともに、
働くこと、生きることをこなそうとする時に生じる不安と不条理に
包まれてしまって、途方のない気持ちが胸にまとわりついてしまう。
とてつもなく奇妙で自由な想像力を体感できる物語。
不穏な工場での日々を3人の従業員が、それぞれに語っていくのだが、
そこにも密やかな仕掛けがあり、とても丁寧な1篇。
熱帯魚飼育に没頭する大金持ちの息子とその若い妻えを描く「ディスカス忌」
心身の失調の末に様々な虫を幻視する女性会社員の物語「いこぼれのむし」も収録。
特に「ディスカス忌」は、小山田浩子の持ち味が滲みでた傑作だと私は思います。

小山田浩子
『工場』
第150回芥川賞受賞作
『穴』も勿論おすすめ。
仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ夏。
見たことのない黒い獣の後を追ううちに、
私は得体の知れない穴に落ちる。夫の家族や隣人たちも、何かがおかしい―。
ごく平凡な日常の中に、ときおり顔を覗かせる異界が、
生きているうちに躓いてしまう些細な違和を、浮かび上がらせてゆく…。
受賞した表題作の他、「いたちなく」「ゆきの宿」の2篇を収録。
この2篇は「ディスカス忌」と繋がりのある物語。どちらもまた端正な短篇です。

只今育児に専念されておりますので、作品は中々出てこないのがもどかしいのですが、
是非皆様も、まずはこの2冊を熟読していただいて、新作の発表を心待ちにしましょう!
いつか長篇も読みたい!短篇ももっともっと読みたい!私は小山田浩子を、読みたいのです!
I より